エリザベスを惑わし、ミス・キングを惑わし、ジョージアナを惑わし、そして、リディアを惑わした稀代のイケメン(?)ジョージ・ウィカム。あ、ミセス・ベネットも騙されていましたね。
ダーシー氏の領地管理人の息子であり、先代のダーシー氏にかわいがられました。
『高慢と偏見』におけるジョージ・ウィカム(ウィッカム)
この青年の魅力はあと軍服さえ着けさえすれば申分なしだったからである。ひどく見映えのする外見をしていて、美しい顔立、素晴らしい身体つき、たいへん感じのよい物腰と、美男子のための最高の条件を備えていた。紹介が済むと、自分のほうからすかさず愛想よく話し掛けて来た。その愛想のよさも実に礼儀正しく、しかも控目なものであった。(p132)
ジョージ・ウィカムは誰の眼にも好ましい男として映りました。
この上ない美男子で愛想のいい男。
コリンズのとんちんかんぶりやダーシー氏の高慢ぶりに辟易していたエリザベスはウィカムによろめき、ほとんどリディアと変わらない態度を見せることに。
ミスター・ウィッカムはすべての女の視線が自分に向けられた幸福な男であり、エリザベスはその男が最後に自分の隣に座ってくれた幸運な女であった。
ウィカム、ミス・キングとのうわさ
しかし、ほどなくしてウィカムと1万ポンドの資産を持つミス・メアリ・キングの仲が噂されることに。
エリザベスはその噂に対して「ウィカムが結婚によって経済的な利益を得るならそれもありなんじゃない。でも、わたしに財産があったら、わたしを選んでいたでしょうけれど」と強がりつつもこれでよかったのだ、と納得しています。
美男子と雖も醜男同様、食べる手立てがなくては生きて行けないのだという苦い真実が受け容れられないのです。(p263)
ウィカムとダーシーそれぞれの言い分
ウィカムとダーシーの言い分は全く正反対です。箇条書きでまとめておきます。
ウィカム
- 先代のダーシーにかわいがってもらった
- 先代のダーシーの引き立てにより、牧師になるはずだった
- しかし、ダーシー氏の不興をかい、先代の遺言を無視される
- 結果、牧師になれなかったので、軍隊に入った
- ジョージアナは兄に似て気難しい、高慢な女である
- ダーシー氏は高慢で嫌な男だ
ダーシー
- ウィカムは若いころから女癖が悪かった
- 3万ポンドの資産を約束されている15歳のジョージアナを誘惑し、駆け落ちをそそのかす
- ダーシー氏が金を払ってウィカムを追い出す
- ウィカムは不品行な生活をしている
- ウィカムは自己中心的で身勝手な男だ
結局のところ、ウィカムは嘘と虚栄心で己を塗り固め、ダーシー氏が真実を告げていることがのちに判明します。
ウィカムとリディアの駆け落ち
その昔、ジョージアナを誘惑したようにウィカムはリディアを誘惑し、一緒に駆け落ちします。
ウィカムはリディアを愛していなかったでしょう、この時も、その前も、その後も。でも、リディアはどうだったのだろう?とよく思いました。
「愛しいウィカム、ハンサムなウィカム」
とリディアは言いますが、それは表面的なものであり、心の底からの愛ではないだろう、と判断しています。
『高慢と偏見』でリディアとウィカムの結婚で終わっていますが、あのあとの二人の結婚生活はどういうものだったのだろう?とよく想像させられます。
一種の悪い男であるウィカム。
それだからこそ、当時の初心なお嬢様方にはたまらない魅力があったのだろう、と感じます。いや、今でもイケメンでちょっと悪っぽい雰囲気を漂わせている男は人気があるかもしれませんね…!
ジョージ・ウィカム(ウィッカム)を演じた俳優
『高慢と偏見』(1940年) | ー |
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『高慢と偏見』(1995年) | エイドリアン・ルーキス( Adrian Lukis ) |
『プライドと偏見』(2005年) | ルパート・フレンド( Rupert Friend ) |
『高慢と偏見とゾンビ』(2016年) | ジャック・ヒューストン( Jack Alexander Huston ) |
オースティンの原作、『高慢と偏見』でウィカムは人好きのするイケメンだと記載されています。
さて、実際は?というと…
わたし好みのイケメンはなかなかおらず…
あえて言うならば、BBCが制作した『高慢と偏見、そして殺人』のドラマでウィカムを演じているマシュー・グッドが好みかもしれません(^^;
そりゃ、このウィカムならわたしも惑わされるわ、と。
他の俳優がウィカムはわたしの心を動かしませんでしたね~残念。
まぁ、ウィカムは悪い奴だ!という思い込みがあるからかもしれませんね。