ダーシー氏の妹、ジョージアナ。
ダーシー氏がとてもかわいがり、美しく、ピアノが上手な少女として描かれています。
『高慢と偏見』におけるジョージアナ
キャロライン・ビングリーによるジョージアナ評。
私、一緒にいてあんなに愉しい方にお会いしたのは初めてよ。本当にお綺麗で、お淑やかで! しかもあのお齢でそれはいろいろな才能を身に附けておられて! ピアノフォルテの演奏なんか、ほんと最高。(p75)
これはダーシー氏に対するへりくだりというか、追従というか、ともあれ、キャロラインの下心が見える言葉です。将を射んとする者はまず馬を射よ、と。
が、実際のところ、キャロラインとジョージアナの仲が良かったところを想像するのは難しいですね。
フィッツウィリアム大佐によると「ほんの顔見知り程度」とのことですので、キャロラインが思うほど二人は仲良しではなかったのかもしれません。
あんなにお美しくて、しかもあれほどの才藝を身に附けたお嬢様はまたと見られません! まる一日中ピアノを弾いては歌っておいでです。(p420)
レノルズ夫人によるジョージアナ。
ジョージアナは登場シーンこそ少ないけれど、このように周囲の人の褒め言葉によって、才能豊かで美しい令嬢であることが分かるようになっています。
ジョージアナを悪く(?)言うのは唯一、ウィカムです。
出来れば感じのいい娘さんだと云いたいところですけれどね。ダーシー家の人を悪く云うのは辛いことだけれど、でもあのひとはあまりにも兄にそっくりでー実に気位が高い。(p149)
この頃は既にジョージアナとの駆け落ちが失敗した後。
さて、次は実際にジョージアナに対する印象をエリザベス自身が綴った箇所。
ミス・ダーシーは背が高く、エリザベスよりも大柄であった。十六になったばかりだが、身体つきはもう大人で、容姿にも女性らしい淑やかさが見られた。目鼻立ちの美しさでは兄に一歩を譲ったが、その顔には思慮深さと人柄の明るさが感じられ、態度もおっとりとしていてまったく気取りがなかった。
15歳のジョージアナとウィカムの駆け落ち
ウィッカムはまんまとジョージアナに近づいて巧みに機嫌を取りました。妹は心の優しい娘で、子どもの頃にウィッカムから親切にしてもらったことが忘れがたい思い出になったいたこともあって、いつしか自分はウィカムに恋をしていると思い込み、到頭駈落に同意してしまったのです。妹は当時まだ十五歳でしたから、ウィッカムの口車に乗せられたのも無理はありません。(p348)
しかし、たまたま駆け落ちが計画されていた前日にダーシー氏がジョージアナの前に姿をあらわしたことにより、計画が発覚します。
ダーシー氏はジョージアナの名誉のために、ウィカムに相応のお金を支払い、ウィカムを追い払いました。残されたジョージアナの気持が酷く傷ついたことは想像に難くありません。
そして、この後、ウィカムはベネット家の末娘リディアを連れて駆け落ち、と同じことを繰り返すわけですね。
自分の窮地を脱するために一人で大きな決断ができず、自分が楽になる、自分を逃がすために幼い少女を使うウィカムの手癖の悪さには憤慨しかありません。
ウィカムがジョージアナとリディア、そして、ミス・キングに心の底から惚れていたかというと甚だ怪しいですね。
一方で、ジェイン・オースティンがここまでリアルにウィカムの悪辣さを描いていることを見ると、当時はこのような男が意外と多かったのかしら?と埒もない想像をしてしまいました。
現代と異なり、女性の貞節がことさらに大げさに考えられていた時代に、ウィカムみたいな男が存在していたことは本当に悲しいですね…。
ジョージアナ・ダーシーを演じた女優
『高慢と偏見』(1940年) | ー |
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『高慢と偏見』(1995年) | エミリア・フォックス( Emilia Fox ) |
『プライドと偏見』(2005年) | タムジン・マーチャント( Tamzin Merchant ) |
『高慢と偏見とゾンビ』(2016年) | モーフィド・クラーク( Morfydd Clark ) |
ダーシー氏の妹、ジョージアナは都の時代の新人女優が演じることが多いですね。
傾向としてモデル顔の女優さんがが配される印象。
いつも思うのですが、ジョージアナは結局、最終的にどんな男性と結婚したのでしょうか?
ベネット家の姉妹や、キャロライン・ビングリーよりもジョージアナの結婚相手ばかりが気になるわたしなのでした。
ウィカムのことをとっとと忘れて、いい人と巡り合えますように、と思わずにはいられません。
ジョージアナはそう思わせる可憐な少女ですね。