イメージ画像 キャロライン・ビングリー ハースト夫人

ビングリー氏の姉と妹。

姉はハースト夫人、妹はキャロライン・ビングリー。ダーシー氏を巡ってエリザベスとバチバチの関係になります(?)。

わたしは何気にキャロライン・ビングリーの行動に「?」を感じる一方、「ああ、これはこじらせ女子の行動なのか?」と考えたりして、妙に共感したり。

都会育ちの洗練されたレディを演じるあまり、空回りをしている感が強い印象。一方、姉のハースト夫人はシャーロットに似た考えの持ち主なんだろう、と勝手に決めつけています。そして、ハースト氏の生活は何気に憧れます(違う)

『高慢と偏見』におけるキャロライン・ビングリーとハースト夫人

エリザベスには、ビングリー姉妹を認める気などさらさらなかった。それは、確かにたいへん垢抜けしたひと達ではあった。気が向けば朗らかにすることも出来たし、そうしようと思えば愛想よくすることも出来ない訳ではなかった。だがいかんせん高慢で自惚れが強かった。どちらかと云えば美人の方であり、ロンドンの一流の私塾で教育も受けており、2万ポンドの財産があって、分不相応に金を使って上流社会の人達と交際することにも慣れていた。従ってあらゆる点で自分達を立派だと思い、他人を見下そうとするのも無理はなかった。(p37-38)

二人の兄弟チャールズ・ビングリー氏は愛想のいい紳士なのに、なぜ、この姉妹がこのような高慢な性格になったのか理解に苦しみます。

基本的にこの二人は噂話という形で第三者をチクリと攻撃します。で、それが自らに跳ね返ってくる、と。

「エライザ・ベネットって」と、エリザベスが部屋から出て扉が閉まると、ミス・ビングリーが云った、「同性を貶めることで自らを異性に売り込もうというあの手の女の一人ね。それがまた結構上手く行くのよね、多くの男に。でもそういうのは、私に云わせればけちな小細工だわ、ひどく卑しい手口よ」(p78)

キャロライン・ビングリーの場合、「どの口が言うのだ?」という皮肉というか嫌味が多く、概ねすべてがブーメランになって帰ってきている事実がなかなか面白く思います。

頭が回りそうで回らない、というか、詰めの甘い女、という印象。

ダーシー氏に自分を印象付けようと頑張りながらも、結局はダーシー氏に自らの気持ちを確認させただけのような気がします。

そういう意味ではレディ・キャサリン・ド・バーグと同様に彼女もダーシー氏のエリザベスへの気持ちを確認させただけですね。

ダーシー氏とキャロライン・ビングリーの会話

「僕の心はもっと愉快なことに奪われていた。僕は綺麗な女性の顔に具わった一対の美しい瞳が与え得る大いなる喜びについて考えていたんです」

ミス・ビングリーは瞬間たちどころにダーシーの顔を見詰め、一体どの女性があなたにそのような考えを吹き込む栄誉を得たのか、是非とも聞かせて頂きたいと云った。ミスター・ダーシーはいとも大胆に答えた。

「ミス・エリザベス・ベネット」

しかし、この時点でキャロライン・ビングリーはダーシー氏の言葉に驚きはするものの、半信半疑。

そして、「エリザベスと結婚をしたら、あのお母さん(ミセス・ベネットのこと)がしょっちゅう遊びにくるわよ」とからかう余裕があります。

次は風邪に倒れたジェインを見舞いにやって来たエリザベスに対するキャロライン・ビングリーのセリフ。

「ねえ、ダーシーさん」とミス・ビングリーが半ば声を潜めて云った、「このことで、あのひとの綺麗な眼に対するあなたの評価も少し変わったのではありません?」

「いや、全然」とダーシーは答えた。「運動のために一段と輝きが増していた」(p71)

ペンバリーでエリザベスと再会したとき。

「ねえ、ミスター・ダーシー、今日のイライザ・ベネットは随分と顔色がよくなかったわね」とミス・ビングリーは声を揚げて云った。「冬以来あんなに面変りのしたひとに会ったのはへ初めてだわ。真黒に日焼けした上に肌もがさがさになって!すぐにはあのひとだと判らなかったってルイーザとも話していましたの」

(一部省略)

「あの人のどこが美しいのかさっぱり判りません。顔は痩せすぎだし、顔肌には艶がないし、眼鼻立も全然整っていないし、鼻だって特徴のない鼻で、特に鼻筋が際立っている訳でもない。歯並はまあまあだけれど、それだって特にどうと云うほどのものではないし、眼にしたって、ときどき綺麗だと云う人がいるようだけれど、私は特にいいと思ったことは一度もなくてよ。眼附が鋭くて意地が悪そうで、私はああいう眼附は大嫌いです。それにあの態度全体に見られる自信たっぷりな品のなさね、あれにはほんとに堪らないわ」(pp457-458)

以下、キャロライン・ビングリーによるエリザベス批判が続きます(笑)つくづく女の嫉妬は怖いものですね。

それに対するダーシーの返答は以下。

「もう何箇月ものあいだ、知合いの女性の中ではあの人が一番の美人だと思っている」

それに対して作者のジェイン・オースティンは「自分以外の誰にも苦痛を与えない言葉が引出せて、さぞかし満足であったろう」と皮肉を放っています。

キャロライン・ビングリーはダーシー氏に惚れていたのか?

キャロライン・ビングリーはダーシー氏に惚れていたのか?と考えることがよくあります。

ある意味では惚れていたのでしょう。彼の社会的地位、年収、風貌、当時の基準で考えるとダーシー氏はパーフェクトな夫だったでしょう。キャロラインはそういうパーフェクトな兄の親友に恋したのでしょう。

そう、わたしの脳内ではある日、兄のビングリー氏が連れてきた親友にうっとりとする若き日のキャロラインの姿が目に浮かびます。

憧れに近い恋を抱いたのでしょう。

そして、わたしはこの男の人の妻になるわ!とキャロラインが高慢にも思ってもおかしくありません。

が、彼女は肝心のダーシー氏の心をつかむことができず、いつまでたっても「親友の妹」という立場に甘んじるしかなかったのでしょう。そして、結局はエリザベスの引き立て役に過ぎなかった、と。

実際にエリザベスとダーシー氏の結婚を知ったとき、キャロラインは地団駄踏んだでしょう。プライドもへし折られたでしょう。

でも、彼女は心の底からダーシー氏を愛していたか、というと怪しいんじゃないかしら?と思うわけですよ。

まあ、いろいろな意味でキャロラインはちょっと哀れな存在ですね。

演じた女優

キャロライン・ビングリー

『高慢と偏見』(1940年) フリーダ・イネスコート( Frieda Inescort )
『高慢と偏見』(1995年) アンナ・チャンセラー( Anna Chancellor )
『プライドと偏見』(2005年) ケリー・テイリー( Kelly Reilly )
『高慢と偏見とゾンビ』(2016年) エマ・グリーンウェル( Emma Greenwell )

個人的にはBBCのアンナ・チャンセラーさんが忘れ難いです…いろいろな意味で。

ハースト夫人

『高慢と偏見』(1940年)
『高慢と偏見』(1995年) ルーシー・ロビンソン( ucy Robinson )
『プライドと偏見』(2005年)
『高慢と偏見とゾンビ』(2016年)

ハースト夫人よりも夫のハースト氏のほうがわたしの中に印象として残っています。ひそかにハースト氏になりたい!と夢描いております(汗)