ジェイン・オースティンが生きた18世紀から19世紀初めにかけて、イギリスはもちろん、世界は激動の時代でした。
しかし、オースティンの作品ではこれらの激動の歴史の動きが直接的に触れられることはありません。
1775年~1816年のイギリスと世界の動き
1775 | 12月16日、ハンプシャー州スティーヴントン村に8人きょうだいの7番目として生まれる |
1778年(ジェイン2歳) | 2月 フランスがアメリカと同盟を結んで独立戦争に参戦 |
1779年(ジェイン3歳) | 6月 スペインはフランスの圧力によって対イギリス戦に参加 |
1780年(ジェイン4歳) | 6月 ロンドンでゴードン暴動が起こり、社会不安が広がる |
1783年(ジェイン7歳) | 9月、アメリカ独立戦争の講和条約、ヴェルサイユ条約を締結 |
1788年(ジェイン12歳) | 11月、国王ジョージ3世が病に倒れ、皇太子の摂政任命を巡り議会が紛糾 |
1789年(ジェイン13歳) | 2月、ジョージ3世回復 7月14日、パリでバスティーユ牢獄が襲撃される、フランス革命のはじまり |
1791年(ジェイン15歳) | 4月、奴隷貿易禁止法法案が否決される 6月、ルイ16世とマリー・アントワネットがパリ脱出を企てたもの失敗 8月、西インド諸島のフランス領植民地(現在のハイチ共和国)で10万人の奴隷・元奴隷が蜂起 |
1792年(ジェイン16歳) | 8月10日、ルイ16世の王権停止、タンブル塔に幽閉 9月21日、フランス国民公会は共和国の樹立を宣言 |
1793年(ジェイン17歳) | 1月21日、ルイ16世処刑 2月、フランスがイギリスに宣戦布告、革命の普及を恐れ第1次対仏同盟が結成 6月、ジャコバン派が権力を掌握、恐怖政治が始まる 10月16日、マリー・アントワネットが処刑される |
1794年(ジェイン18歳) | 2月、フランスが植民地における奴隷制を廃止 7月28日、ロベスピエール一派の処刑によってフランスの恐怖政治が終焉 |
1795年(ジェイン19歳) | 12月、扇動集合禁止法および反逆活動禁止法がイギリス議会を通過 |
1796年(ジェイン20歳) | 3月、ナポレオン将軍のイタリア遠征がはじまる |
1797年(ジェイン21歳) | 2月、イングランド銀行が現金支払いを停止 10月、第一次対仏同盟は崩壊し、イギリスは孤立 |
1799年(ジェイン23歳) | 11月、ナポレオンが第一執政に就任、フランスの政権を握る |
1803年(ジェイン27歳) | 5月、フランスとの戦争が再開 |
1804年(ジェイン28歳) | 5月、ナポレオンがフランス皇帝に即位 |
1805年(ジェイン29歳) | 10月、トラファルガーの海戦でフランスに勝利 |
1806年(ジェイン30歳) | 11月、ナポレオンがイギリス封じ込めのための大陸封鎖令を発令 |
1807年(ジェイン31歳) | 3月、イギリスが奴隷貿易を禁止 |
1808年(ジェイン32歳) | 5月、ナポレオンが兄ジョゼフをスペイン王位につける、これによりスペイン独立戦争がはじまる 8月、イギリス軍がポルトガルへ上陸するも、ナポレオン軍に敗北する |
1809年(ジェイン33歳) | 1月、イギリスはスペインから撤兵 ナポレオンの覇権が絶頂に達する |
1811年(ジェイン35歳) | 前年より続いたジョージ3世の病気により皇太子が摂政に |
1812年(ジェイン36歳) | 6月、米英戦争がはじまる 大陸ではロシアとフランスの争いが激化 |
1813年(ジェイン37歳) | 10月、ライプツィヒの戦いで大敗 |
1814年(ジェイン38歳) | 4月11日、ナポレオンがフランス皇帝を退位、エルバ島へ流される ルイ18世がフランス国王に即位 |
1815年(ジェイン39歳) | 3月、ナポレオンがエルバ島を脱出、パリに帰還して皇帝に復帰(100日天下) 6月、ワーテルローの戦いで連合軍がナポレオン軍を敗る、ナポレオンはセントヘレナ島へ流される ウィーン体制確立 |
1816年(ジェイン41歳) | ジェイン・オースティン、死去 |
オースティンの生涯に関してはこちら、『高慢と偏見』作者、ジェイン・オースティンとその生涯 を参照ください。
合わせてみると興味深いものがあります。
フランス革命、ジェインの従姉、イライザの夫の処刑
伯母フィラデルフィアの娘でインド生まれの従姉イライザ(1761~1813)。
このイライザの嫁ぎ先がフランスの貴族、ジャン・フランソワ・カポー・ド・フュイドがギロチンで処刑されています。
後にこのイライザはジェインの兄、ヘンリー・オースティンと再婚します。
なので、イギリスの片田舎に住んでいたとはいえ、ジェイン・オースティンも激動の時代の動きを感じ取っていたはずですが、彼女の小説ではそれらについて触れられることはほとんどありません。
オースティンは自らが直接に知っていることしか描かないようにしていたことを感じますね。
産業革命
管理人コメント
まさに世界史の教科書で学んだこと、それがそのままジェイン・オースティンが生きていた時代に起こりました。
激動の時代です。
ジェインの41年の生涯と重ねてみると、当時のフランスがいかに目まぐるしく政変が起こったのか実感できます。
特にフランス革命 → ナポレオン登場 → ヨーロッパを征服 → 敗退がこのような短い時間で起こった事実に驚かされました。
多感なジェイン・オースティンはそれらの事実をどのように受け止めていたのか、考えさせられますね。