イングランド銀行サイトより 10ポンド紙幣
出典:イングランド銀行サイトより 10ポンド紙幣

2019年現在、イギリスの10ポンド紙幣に使われている肖像画をご存知ですか?

実はジェイン・オースティンの肖像画が使われています。

日本でも樋口一葉や紫式部が紙幣に使われることがありますが、それと同様にイギリスでも紙幣に著名人の肖像画を使うんですね。

これは何を意味しているのでしょうか?

それだけジェイン・オースティンの存在がイギリスでは大きいということを示しています。

当ブログで取り上げる『高慢と偏見』はオースティンの最高傑作と評されることも多い作品です。

『高慢と偏見』とは?

独身の男でかなりの財産の持主ならば、必ずや妻を必要としているに違いない。これは世にあまねく認められた真実である。

出典:『高慢と偏見』大島一彦訳/中公文庫

『高慢と偏見』はこの有名な出だしから始まります。

当時の上流中流階級の女性は外に出て働くことはせず、結婚のみが生きる道、それも資産家の男性を捕まえることがより幸せに結びつくと信じられていました。

そんな時代に経済的利益のみの結婚に疑問を抱き、自分の理性と感情に従うことを望んだエリザベス・ベネットを主人公にして当時の社会と結婚観が描かれます。

作者、ジェイン・オースティン

作者はジェイン・オースティン。

冒頭に記載しましたように現在、イギリスで使われている10ポンド紙幣に印刷されているほどイギリスで親しまれている作家です。

その作品の映像化は何度か行われており、近年は『プライドと偏見』がつとに名高く、派生作品として(?)『高慢と偏見とゾンビ』なども作られましたね。

またシリーズを通して大ヒット作となった『ブリジット・ジョーンズの日記』シリーズの原型は『高慢と偏見』にあるということもつと知られています。

オースティンがなくなって200年以上たちますが、今でもイギリスはもちろん、世界で愛されている作家のひとりと言えるでしょう。

『高慢と偏見』作者、ジェイン・オースティンとその生涯

本題に入る前に…当時の女性の恋愛と結婚

18世紀終わりから19世紀の初頭、つまりジェイン・オースティンが過ごした時代の結婚が持つ意味は今以上に重たいものでした。

特に経済力という意味では。

当時の一般的な女性にとって、生きていくうえで社会的地位と経済力を確保するには通常の場合、「結婚」という手段しかありませんでした。

ジェイン・オースティンはもちろん、『高慢と偏見』のヒロイン、エリザベスのような中産階級以上の女性にとって、淑女としての品位をどうにか保てる職と言えば、文筆業か家庭教師ぐらいでした。

が、それよりも評価されるのは結婚して一家を切り盛りする主婦になること。

妻たるもの「家庭の天使」であるべきだという価値観がまかり通っていた時代、女性にとって「結婚=就職」だったのです。

『高慢と偏見』あらすじ

イングランド南東部のハートフォードシャー、ロングボーンに住む中流階級のベネット家には年頃の娘が5人います。

上から美しく公平な心を持つジェイン、聡明なエリザベス、生真面目なメアリ、明るく陽気なキティとリディア。

おりしも、ベネット家の近くに独身の資産家、ビングリー氏が引越しをしてきて、年頃の娘とその母親はビングリー氏に関心を向けます。

そして、ビングリー氏は舞踏会で近隣一の美女ジェインに心惹かれ、彼女と2度もダンスをすることに。一方、ジェインも好青年のビングリー氏に惹かれ、ベネット夫人は上機嫌。早速、ジェインとビングリー氏の結婚を夢描きます。

ビングリー氏は友人を連れてきていました。独身であり、かつ年収1万ポンドの大地主、ダーシー氏。当初は周囲の人々の眼をひきつけますが、鼻持ちならない高慢な態度にダーシー氏の評価は急激に下がります。

さらにダーシー氏はエリザベスを「まあまあの美人だけれど、僕にダンスをさせたいきにさせるほどではないな」と酷評し、エリザベスのダーシー氏に対する評価も手厳しいものに。しかし、実際のところ、ダーシー氏はエリザベスにどんどんと惹かれていきます。

ジェインがネザーフィールド屋敷で寝込んだ時、エリザベスとダーシー氏は一つ屋根の下で過ごし、彼の心はますますエリザベスに傾いていきます。

その頃、ベネット家の限嗣相続人であるコリンズがベネット家にやってきます。

牧師のコリンズは妻となる女性を探しており、当初はジェインに、次はエリザベスに目を付けます。しかし、エリザベスは自らの心に従い、コリンズとの結婚では幸せになれないと思い、彼を拒絶します。エリザベスに振られたコリンズに対して友人のシャーロットがアプローチを仕掛け、結果、コリンズとシャーロットの結婚が発表されることに。

ダーシー氏もコリンズも眼中にないエリザベスは近くの町メリトンで士官のウィカムと知り合います。

ハンサムで人あしらいの上手なウィカムにエリザベスは好感を抱きます。その時、偶然と、ダーシー氏が通り過ぎ、ダーシー氏とウィカムの顔色が互いに変わったことに気づきます。ウィカムからダーシー氏の不誠実な行いを聞かされ、怒りに震えるエリザベスはダーシー氏に直接訴えますが、彼は相手にしません。

そして、ジェインといい雰囲気だったビングリーは姉やダーシー氏と共にロンドンへ行き、しばらく戻らない、と。

ケント州、ハンスフォードの牧師館にて

高慢と偏見 イメージ写真 城

ケント州、ハンスフォードの牧師館を訪れたエリザベスはコリンズとシャーロットの歓迎をうけ、しばしば、キャサリン・ド・バーグ夫人の住むロージングズに招かれます。

キャサリン・ド・バーグ夫人はダーシー氏の叔母に当たる人であり、彼も従兄弟のフィッツウィリアム大佐と共に滞在しており、エリザベスは嫌でもダーシー氏と顔を合わせる時間が増えていきます。

結果、ダーシー氏のエリザベスへの気持はつのり、エリザベスは彼がジェインとビングリー氏の仲を壊したのだ、と感じ取り、ますます嫌になります。

ところが、そんな折、ダーシー氏がエリザベスに「君を愛している」と熱烈な愛の告白をし、彼女はびっくりすることに。

しかし、その告白はダーシー氏の高慢さゆえに「君の身分が低いことに葛藤を抱いているけれど、君を好きな気持ちを抑えられない」とエリザベスの家族を侮辱するものであり、ジェインとウィカムのこともあいまり、エリザベスの怒りがあふれ出ます。そして、あなたとの結婚なんてありえないと強く拒絶します。

翌日、ダーシー氏から手紙を受けとります。

そこにはジェインとビングリー氏のこと、ウィカムに関する思いがけないことが書かれており、エリザベスは自らの偏見に気づかされることに。

ペンバリーにてエリザベスとダーシー氏が再会

高慢と偏見 イメージ写真 城

ガードナー夫妻と旅行に出かけたエリザベス。

道中にはダーシー氏の屋敷、ペンバリーがあり、エリザベスとガードナー夫妻は見学に立ち寄ることに。素晴らしい屋敷を堪能していると、急に帰宅したダーシー氏と遭遇してしまいます。

互いに動揺しますが、ダーシー氏は承認であるガードナー夫妻に対して丁寧に対応し、エリザベスは驚きます。さらにダーシー氏の妹、ジョージアナとも交流を深め、エリザベスは彼の気持がまだ自分のもとにあることを感じ、嬉しく思います。

しかし、姉ジェインからの手紙により、末娘のリディアとウィカムが駆け落ちをしたことを知り、動転します。そこへダーシー氏が来て、動転したままエリザベスは彼に「身内の恥」とうちあげ、ダーシー氏の心が離れたことを感じ取ります。彼は黙ってその場を去り、エリザベスはガードナー夫妻と一緒に急ぎ帰宅。

リディアとウィカムの結婚

急ぎ二人の駆け落ち先であるロンドンに向かった叔父がリディアとウィカムの結婚の体裁を整えてくれ、家族は安堵します。

しかし、のちにこれはダーシー氏の尽力によるものであることをエリザベスは知り、感謝の気持ちを抱くことに。

ウィカムは賭博による多額の借金を抱えているために連隊から逃げ出し、リディアをその道連れにしたものの、持参金のない娘とは結婚するつもりはありませんでした。

そこで、ダーシー氏は借金の清算と生活の安定のために将校の株を買ってやり、さらにはリディアに持参金を持たせることまでして二人を結婚まで導いたのです。すべてへエリザベスの名誉を守るために。

リディアが結婚し、一段落ついたベネット家にさらなる嬉しい知らせが。

ビングリーがネザーフィールド屋敷へ帰ってくる、と。

ジェインとビングリー氏、エリザベスとダーシー氏

高慢と偏見 イメージ写真 結婚

ビングリー氏はジェインにプロポーズをし、ベネット家は喜びに包まれます。

そこへダーシーの叔母、キャサリン・ド・バーグ夫人が唐突に訪れ、「甥のダーシーと結婚するという噂が出ているがそれは断固許さない。ダーシーは私の娘と婚約しているのだ。高貴な二人が結ばれ、両家の財産を一つにするのが世の習いなのだ。それを今更、身分の卑しい女が邪魔するなんて!」と激高します。

エリザベスは冷静に「他人の問題に介入する権利は誰にもない」と告げ、キャサリン・ド・バーグ夫人はますます激高し、そのままダーシー氏に告げます。

それを聞いたダーシー氏はわずかながらも希望を見出してエリザベスのもとへやってきて、互いに気持ちを素直に告げます。

エリザベスとダーシー氏の結婚は大いに祝福され、結婚後、エリザベスはペンバリーの女主人となり、ジェインとビングリー氏夫婦、ジョージアナ、ガードナー夫妻と仲良く過ごします。

『高慢と偏見』登場人物

 

高慢と偏見 相関図

オースティンは田舎に住む3家族か4家族で物語を作ることが知られていますが、それは『高慢と偏見』でも変わりはありません。

ベネット家を中心にビングリー家、ダーシー家、ルーカス家などが物語を紡いでいきます。

『高慢と偏見』登場人物