エマ・テナント リジーの庭

エマ・テナント( Emma Tennant )が描いた続編『リジーの庭( An Unequal Marriage )』。

エリザベスとダーシー氏は結婚して19年経っている設定で綴られており、二人の間には娘と息子が存在しているという設定。

そして、ダーシー氏の従兄弟フィッツウィリアム氏の結婚と息子エドワードのごたごたに周囲を巻き込みながらごたごたしていく設定になっています。

『高慢と偏見』からの19年後の変化

エマ・テナント リジーの庭

『高慢と偏見』から19年後の変化をざっくりとまとめますと…

  • エリザベスとダーシー氏には娘と息子がそれぞれ一人ずつ
  • ベネット家の5人娘は結婚
  • 18年前にベネット氏が死去、三女のメアリも死去
  • コリンズ夫妻がベネット氏の財産を相続
  • コリンズ夫妻がロングボーンのベネット邸へ移ってきた
  • ベネット夫人はダーシー氏の手配したメリトンの屋敷へ移り住む
  • キャサリン・ド・バーグ夫人とダーシー氏は仲直り
  • キャロライン・ビングリーとド・バーグ夫人の娘は独身

という設定で物語はすすみます。

『リジーの庭』のあらすじ

物語の舞台はエリザベスとダーシー氏の結婚から19年後。

二人の間にはミランダという娘と、跡取りである息子エドワードがいます。

エリザベスの父ベネット氏や三女メアリは既に亡く、母ベネット夫人は住まいをコリンズ夫妻に明け渡し、現在はメリトンで気ままに一人で暮らし、コリンズ夫妻やロング夫人とのおしゃべりに興じています。

或る日、ベネット夫人のもとに立派な馬車に乗ったハーコート侯爵夫人が訪れ、ベネット夫人に思いがけないことを告げます。あなたは侯爵家の縁続きですよ、と。そして、近々、ロンドンへあなたを招待する、と。

その頃、エリザベスとダーシー氏は従兄弟のフィッツウィリアム大佐とスコットランドの伯爵令嬢ソフィアとの結婚式の準備に追われています。その場にはイートン校へ行っている長男エドワードも帰宅する予定にしており、エリザベスは楽しみにしています。

結婚式への出席に向けて、懐かしい面々も続々と顔を出します。

ジェインとその夫ビングリー氏、二人の間の子ども、ビングリー氏の姉妹、キャサリン・ド・バーグ夫人とその娘、ガーディナー夫妻…(しかし、不思議なことにジョージアナが登場しないんですよね)

そこへエドワードが賭博で負け、ウェールズの領地を失った、と連絡が入ります。

ダーシー氏はすぐさまロンドンへ向かい、残されたエリザベスは悲しみと怒り、混乱を隠し、女主人としてフィッツウィリアム大佐とソフィアの婚儀を執り行うことに。

その頃、ベネット夫人と末娘リディアも結婚式出席のためにロンドンへ向かいますが、果たして。

フィッツウィリアム大佐の結婚式を無事に終えた後、エリザベスはダーシー氏からエドワードのことは無事に解決した、と聞かされます。退学にもならないし、名誉に傷もつかないし、領地を失うこともない、と。

しかし、後日、ソフィアの口からエドワードは勘当されたことを知ります。ダーシー氏は領地を守るためにエドワードを勘当した、と。

ここでエリザベスの気持ちは一気にくじけることに…果たしてダーシー氏の真意は?

作者、エマ・テナント( Emma Tennant )とは?

この作品を描いたのはエマ・テナント( Emma Tennant )。1937-2017。

ネオ・ゴシックなど少々変わった作風の小説を得意とするイギリスの女性作家で、古典作品の続編を好んで手掛けることでも知られている。

として、『この作品』以外にも同じジェイン・オースティンの作品として『ペンパリー館』や『エマ』、『分別と多感』などがあります。

尚、『ペンバリー館』は『高慢と偏見』から数年後の、妊娠できないことに悩むエリザベスとダーシー氏が登場するようです。

『リジーの庭』に対する個人的な感想

想像していたよりも読みやすく、これはこれで別の作品として楽しめましたが、やはり本家の『高慢と偏見』には遠く及びません。

実際、アメリカやイギリスのAmazonの評価を見ていますと、評価はかんばしくありません。イギリスでは5つ星の内星3つ、アメリカに至っては星2つという低評価です。それも納得の出来栄えでした。

登場人物の設定はともかくとして、物語の展開が・・・なんていうかチグハグで無理やりにパッチワークで付けたような印象です。

すべてが唐突なんですよね、結局。全体的に悪い意味でジェットコースター的な、安っぽい3流小説のような展開を見せます。

また、この作品ではエリザベスとベネット夫人の両者から物事を見て、動きや心理を描写していくシーンが多いのですが、二人ともあまりに心が揺れすぎていますし、悪い意味であまりにもちょろすぎます。

ベネット夫人は確かに愚かでどうしようもない性質でしょうが、それを鑑みてもこの展開はない、と感じました。

これでは、エリザベスの長男、エドワードが余りにも愚かですし、その愚かさゆえにダーシー氏が勘当したというのもアリなん、と思っていたら・・・最後にそれですか!何ですか、この展開は!と本当に驚かされました。

加えて、エリザベスはダーシー氏に息子が許されて喜んでいるだけですが、母親としてそれでいいのですか!?と驚愕です。わたしが母親なら、娘のミランダに財産のすべてを任せ(限嗣相続がそんなに簡単に抜け道があるのなら)、エドワードには一定の額を毎年与えるだけにしますがねーと

また、最後までフィッツウィリアムがあのソフィアと結婚したのか謎で終わったのも残念…

こちらも何かオチがあるのか、と思わせておいて、そのままスルーという残念な終わりでした。本当、私も何故、フィッツウィリアム大佐がソフィアと結婚したのか、謎ですよ…

全体的に肩透かし感が大きく、改めて本家の『高慢と偏見』の魅力に気づかされました。

2019年現在、『リジーの庭』は入手困難

『リジーの庭』は入手が困難。

メルカリでも出回っていませんし、Amazonでも中古本がかなりお高い価格で出品されています。

結果、わたしは図書館で借りて読みましたが、それが現実的かもしれません。図書館にないようでしたら、取り寄せてもらいましょう。