高慢と偏見、そして殺人 p.dジェイムズ

『高慢と偏見、そして殺人( Death Comes to Pemberley )』

イギリスが誇る女流ミステリー作家、P・D・ジェイムズが『高慢と偏見』から6年後の世界を描き出しました。

P・D・ジェイムズとは?緻密で重苦しい物語が特徴のミステリー作家

イメージ画像 本棚

イギリスに綺羅星のごとく登場する女流ミステリー作家は皆、「第2のアガサ・クリスティー」と目されることが多く、P・D・ジェイムズもその一人。

彼女の作品の特徴はとにかく緻密で暗く、重たいムードを漂わせること。そして、物語の展開が遅々として進まない。そして、結局、オチはなんだったのか?と思わせる結末。

でも、それでも読ませるのがP・D・ジェイムズ。彼女の微に入り細に入る描写は好き嫌いが別れるでしょうが、ハマる人はハマります。

また、P・D・ジェイムズは女流作家ですが、作品だけを見ると男性作家の手による印象を受けることもあろうかと思います。作者はそれを意図していたようですが、実際、管理人も騙されました。

シリーズものとして有名なのはアダム・ダルグリッシュ警視(のちに警視長へ昇進)。詩人としても名高い、インテリ派。

個人的には『黒い塔』や『秘密』が印象に残っています。

そして、もう一つはコーデリア・グレイシリーズ。

プロットをきちんと組み立て、決して破綻させずに、緻密に物語を紡いでいく。

とはいえ、わたしの中ではP・D・ジェイムズとジェイン・オースティンの組み合わせは予想外のものでした。あのP・D・ジェイムズがジェイン・オースティンの世界に切り込むのか?と不思議に思いました。

それにしても90歳を超えたP・D・ジェイムズがこの世界を紡ぎだすとは…!

P・D・ジェイムズ著『高慢と偏見、そして殺人』

原題 Death Comes to Pemberley
出版年 2011年
作者 P・D・ジェイムズ

あらすじ

紆余曲折の末にエリザベスとダーシー氏が結婚してから6年後。

二人が住むペンバリーでは平和な日々が続いていた。また、エリザベスの両親、ベネット夫妻は5人の娘のうち、4人を嫁がせて安堵していました(メアリが結婚!)。エリザベスは二人の息子を生んでいました。

レディ・アン(ダーシー氏の母親)の舞踏会前夜、一台の馬車が森から屋敷に向かって暴走してきました。中に乗っていたのはエリザベスの妹、リディア・ウィカム夫人。リディアは半狂乱で姉夫妻に助けを求めます。

ダーシー氏とフィッツウィリアム大佐、弁護士のアルヴェストンが現場に向かうと、デニー大尉の死体があり、その近くでウィカムが「ぼくが殺したんだ!」と叫んでいました。

殺人容疑で逮捕されるウィカム。

事件はエリザベスとダーシー氏、そして一族の皆を巻き込んで法廷へともつれこんでいきます。

なぜ、デニー大尉はあの場で死ぬことになったのか?犯人は誰か?事件の真相は意外な事実をもたらしました。

登場人物

フィッツウィリアム・ダーシー ペンバリーの当主
エリザベス・ダーシー ダーシー氏の妻、ベネット夫妻の次女
ジョージアナ・ダーシー ダーシー氏の妹
レイノルズ夫人 ペンバリーの家政婦
スタフトン ペンバリーの執事
トーマス・ビッドウェル ペンバリーの元御者、年老いた現在は雑用をこなしている
ウィリアム・ビッドウェル 上記の息子、死の床にある
ルイーザ・ビッドウェル 上記の妹、ペンバリーの下僕と婚約中
チャールズ・ビングリー ダーシー氏の友人
ジェイン・ビングリー ビングリー氏の妻、エリザベスの姉
ジョージ・ウィカム ダーシー氏の幼馴染、元士官
リディア・ウィカム ウィカムの妻、エリザベスの妹
ベネット夫妻 ロングボーンの地主、三女はメアリ、四女はキティ
ガードナー夫妻 ベネット婦人の弟夫婦
レディ・キャサリン・ド・バーグ ダーシー氏の叔母
フィッツウィリアム大佐 ダーシー氏の従妹、次期ハートレップ伯爵
デニー大尉 ウィカムの友人
ヘンリー・アルヴェストン 弁護士
パーシヴァル・オリファント卿 教区牧師
セルウィン・ハードキャッスル 治安判事
サミュエル・コーンバインダー 牧師
エリノア・ヤング夫人 ロンドン、メリルボーンの下宿の女主人

P・D・ジェイムズ著『高慢と偏見、そして殺人』ネタバレあり感想

高慢と偏見、そして殺人 p.dジェイムズ

読み終えた感想は「さすがはP・D・ジェイムズ…!読ませるね!」と。

『高慢と偏見、そして殺人』にはミステリー小説として功成り名遂げたP.D.ジェイムズらしさが存分に発揮されています。その一方で、ジェイン・オースティンの世界も破綻させない展開でした。

序文にてP・D・ジェイムズは謙遜しています。

きっとミス・オースティンはわたしの謝罪にこう答えることだろう。そうした忌まわしい題材について書きたいと思っていたら、わたし自身でこの物語を書いたわ。しかも、もっと上手に書いたでしょうね、と。

確かに人間関係の心の機微や動き、田舎の生活を描かせたらオースティンのほうが上かもしれません。

しかし、P・D・ジェイムズも負けていません。読み手が発狂しそうになるほどの緻密さをウリにしたP・D・ジェイムズらしい作風がオースティンの世界観を見事に再現しています。

これぞ、P・D・ジェイムズ。そして、これぞ、ジェイン・オースティン。

ブラボー。

特に冒頭部分は笑えるほどおもしろい…!

殺人事件の顛末

映画『ジェイン・オースティンの読書会』2007年/アメリカ イメージ画像

デニー大尉を殺したのはルイーザの兄、ウィリアム。

彼こそが妹を妊娠させ、傷つけた男だ、と思い込んだウィリアムがデニー大尉を殺します。しかし、実際にルイーザを誘惑し、妊娠させたのはウィカムでした。

事件の夜、ウィカムはデニー大尉と一緒にルイーザが生んだ自分の息子を異母妹のエリノア・ヤング夫人に預けるつもりでルイーザの家に向かっていたのです。

しかし、デニー大尉は亡くなり、ウィカムは収監されてしまいます。

状況はウィカムに不利なものであり、全員一致で有罪の判決がまさに今下されようとした瞬間に、余命いくばくもないウィリアムの告白文書が裁判官の前に持ち出され、絞首台に向かうはずだったウィカムは救い出されることに。

ダーシー氏とフィッツウィリアム大佐は一族の名誉のために身内から殺人者が出なかったことに安堵を覚えます。

そして、その後、ウィカムとリディアは新大陸へ渡り、一族から物理的に距離が離れて安心。

その頃、ジョージアナは弁護士のアルヴェストンといい雰囲気になり、エリザベスのおなかの中には3人目の子供が…

というところで物語が終わります。

エリザベスの物語ではなく、ダーシー氏の物語

全体的にエリザベス視点よりもダーシー氏視点のほうが目につきました。

そして、アダム・ダルグリッシュ警視(P・D・ジェイムズが生み出した物語の主人公)がちらちらと横切りましたが、ダルグリッシュ警視よりもダーシー氏のほうが全体的に優柔不断で頼りない印象を受けてしまったことに驚き…それだけ、ダーシー氏が動揺していたのでしょう。

ウィカムとジョージアナのこと、その後、ウィカムとリディアを結婚させたこと、リディアの姉エリザベスと結婚してはからずもウィカムと義理の兄弟になってしまったこと。フィッツウィリアム大佐と自分がエリノア・ヤング夫人を選ぶという過去に犯した過ち。レディ・キャサリン・ド・バーグをジョージアナの後見人にしなかった苦さ。

その葛藤がいかにもP・D・ジェイムズらしい、と感じました。

よりリアルな悩みとして浮かび上がってきて、わたしはすんなりと感情移入しました。しかし、ヒーローたるものそんな葛藤を見せるのはけしからん、という人にはこの物語はおすすめできませんね。

それにしても、殺人の裁判ほどの公共のが楽しみがあるだろうか

ダーシー氏がウィカムの裁判にて心の中でささやく、「それにしても、殺人の裁判ほどの公共のが楽しみがあるだろうか」にニヤリとしてしまいました。

娯楽の少ない当時はそうだったのでしょう。だからこそ、イギリスのミステリー小説は煌びやかな輝きを放ち、多くの作家を生み出すのだろう、と思いました。

さて、『高慢と偏見、そして殺人』。個人的には非常に楽しく読ませていただきました。

『 Death Comes to Pemberley 』BBCでドラマ化

イギリスで『 Death Comes to Pemberley(デス・カムズ・トゥ・ペンバリー) 』が出版されたのは2011年。

そして、2013年にはもうBBCが『 Death Comes to Pemberley 』として放送しています。さすがです、BBC様。笑

ここでは配役などを紹介しておきます。

フィッツウィリアム・ダーシー マシュー・リス
エリザベス・ダーシー アンナ・マックスウェル・マーティン
ウィカム マシュー・グッド
リディア ジェナ・ルイーズ・コールマン
フィッツウィリアム大佐 トム・ウォード
ジョージアナ・ダーシー エレノア・トムリンソン
ヘンリー・アルヴェストン ジェームズ・ノートン

公式サイトもまだ残っています。

Death Comes to Pemberley BBC

さて、今回の配役ですが、イケメン度があがりまくっていますね。

特にウィカムを演じているマシュー・グッドに興奮。コリン・ファース版ではウィカムがイケメン、イケメンといわれてもピンっと来なかったのですが、今作はぴったりですよーと叫んでしまいました。

マシュー・グッドといえば、わたしの中では『ダウントン・アビー』のカーレーサー役のヘンリー・タルボットがクローズアップされますが、いやーイケメンだわ、と呟いております。

フィッツウィリアム大佐を演じるトム・ウォード(イギリスの長寿番組『法医学捜査班』のハリー・カニンガム役で有名)、弁護士のヘンリー・アルヴェストンを演じるジェームズ・ノートン(次期ジェームズ・ボンドと囁かれ中)と皆いい男っぷりで惚れ惚れします。

ダーシー氏を演じるはマシュー・リス、エリザベスを演じるはアンナ・マックスウェル・マーティン。

ちょっとイメージと違うな、と感じているのですが、見慣れると平気になるのでしょうか!?

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