シャーロット・ルーカスの選択 高慢と偏見

ベネット家の隣人サー・ウィリアム・ルーカスとその妻、また、夫妻の娘であるシャーロット。

サー・ウィリアム・ルーカスとその妻

サー・ウィリアム・ルーカス

以前はメリトンで商売に従事していたが、かなりの財産を作り、市長の職にあったとき、国王への請願が認められて勲爵士(ナイト)に叙せらました。

その後、サー・ルーカスは商売をやめ、ルーカス・ロッジと名付けられた田舎の邸宅で、サーの称号を楽しむ生活をはじめることに。

サー・ウィリアムは勲爵士の身分を得意には思ったが、だからといって偉ぶるようなことはなく、むしろ逆に、誰に対しても丁重そのものであった。生来悪気のない、人懐こい、世話好きな人であったが、セント・ジェイムズ宮殿で叙勲の際の拝謁があってからは一段と礼儀正しくなった。(P41)

ルーカス夫人

ベネット夫人の仲の良い(?)友人。余り頭がよろしくないが、善良な婦人。

夫妻の間には数人の子どもがあり、一番上がシャーロット。娘の一人はマライア。

娘、シャーロット

エリザベスの親友。物語に登場時27歳、独身。

また、物語ではシャーロットは不器量な外見とされています。

この時代に27歳で独身ということは完璧な行き遅れであり、シャーロットもそのことを自覚しています。

しかし、エリザベスに振られたコリンズ氏とシャーロットは手堅く結婚し、彼女の思う女の幸せをつかみ取ります。

シャーロットとコリンズ氏の結婚

エリザベスに手酷く振られたコリンズ氏はシャーロットの優しさ(策略?)にコロリといき、エリザベスに愛の告白を告げて間もなく、3日もしないうちにシャーロットに跪きます。

二人の結婚を知ったベネット家の面々は仰天。

とりわけ、シャーロットの親友でもありるエリザベスは驚き呆れます。

シャーロットがミスター・コリンズの妻だなんて、そんな図は情けないにも程がある!一人の友が自らを辱め、こちらの尊厳を失ったことも心苦しかったが、それにも増して、その友が選んだ運命ではほどほどの幸福も不可能だと思われるだけに、ひどく胸が痛んだ。(p223)

散々な評価です。

次は姉ジェインにエリザベスが訴えるシーン。

ミスター・コリンズは自惚れの強い、勿体ぶった、度量の狭い、愚かな男よ。私はそう思っているけれど、お姉様だってそれは分かっている筈だわ。そんな男と結婚する女はまともな考え方の出来ない女だということも、お姉様は感じている筈よ、私に劣らずね。(p239)

しかし、実際にシャーロットがコリンズ氏と結婚した新居(ハンズフォード)へ訪れてみると、エリザベスの心もやや落ち着きを取り戻します。

どうしてもシャーロットがこの生活にどのぐらい満足しているのだろうかと考えてみない訳には行かなかった。しかし見たところ、結構巧みに夫を操縦しているようだし、夫に対する忍耐もかなり腹が据わっていそうであった。(p275)

シャーロットの名言

大抵の場合、女は実際に感じている以上の愛情を見せといた方がいいのよ。(p48)

ジェインとビングリー氏の舞踏会での様子を見て。ジェインに対するアドバイスとして。

私は仮に明日ジェインがあの人と結婚したとしても、相手の性格を1年間研究してから結婚したとしても、幸せになれる可能性は同じだと思っているの。結婚の幸福なんてまったくの運次第だもの。双方の気質があらかじめ互いによく判っていても、また互いによく似ていても、だから二人の幸福が増すなんてことには決してならなくてよ。夫婦になってしまえば、いつだって互いに似ても似つかぬ者同士になろうと努めて、双方とも腹正しい思いをするのが関の山なんだから。(p50)

上記に続けて、シャーロットはジェインとビングリー氏の結婚を強く望むわ、と。

ダーシー氏と心ならずもダンスを踊る羽目になったエリザベスへの忠告にシャーロットの考えが存分に現れています。

いくらウィッカムが好きでも、ウィッカムより十倍も身分の高い人の眼に不愉快に映るような馬鹿な真似はしないように、と忠告せずにはいられなかった。

そして、次はコリンズ氏との結婚を決めたシャーロット。

とにかく結婚することがシャーロットの目的であった。教育があっても財産のない若い女にとって、結婚は喰いはぐれないための唯一の恥しくない手段であり、幸福が得られるかどうかはいかに不確かであろうと、貧乏を免れるための予防策としては最も快適なものに違いなかった。その予防策を今や手に入れたのである。既に27歳で、美貌にも恵まれなかったシャーロットは、この幸運を沁じみと噛締めた。(p218)

シャーロットにとって結婚とはロマンスやラブではなく、「就職活動の一環」と捉えた方が分かりやすいと思います。

それがより顕著になるのは次、シャーロットがコリンズとの結婚をエリザベスに告げる場面ではないでしょうか。

あなたも知っての通り、私はロマンティックな女ではないし、今までだってそんな女ではなかった。私は安楽な家庭が欲しいだけなの。ミスター・コリンズの人柄や、縁故関係や、社会的地位を考えれば、私はあの人と結婚しても幸福になれる見込みは十分になると思っているの、大抵のひとが結婚生活に入って誇れる程度の幸せは得られるだろうと。(p222)

シャーロットは「恋」や「愛」などといった曖昧なものに踊らされる女ではないことがよく分かりますね。

このシャーロットのセリフは結婚してから考えると実に理にかなっていることを感じます。可能であれば結婚前に考えておくべき事案でした。

シャーロット・ルーカスを演じた女優

『高慢と偏見』(1940年) カレン・モーリー( Karen Morley )
『高慢と偏見』(1995年) ルーシー・スコット( Lucy Scott )
『プライドと偏見』(2005年) クローディ・ブレイクリー( Claudie Blakley )
『高慢と偏見とゾンビ』(2016年) エイズリング・ロフタス( Aisling Loftus )

物語において、シャーロットは不器量とされていますが、一方でとても知的で賢明な娘。

そのシャーロットの個性を感じさせる美人女優さんが配役されていますね・・・!