高慢と偏見 メアリのイメージ

ベネット家の五人姉妹の真ん中、三女のメアリ・ベネット。

映像化されるとだいたいメアリは眼鏡をかけており、器量はあまりよろしくない、とされています。

メアリ・ベネット( Mary Bennet )の性格、他

何しろお前は若いけれども物事を深く考える方だし、難しい本を読んで抜書集まで作っているんだから。(p24)

舞踏会の会場にて。

メアリーは姉妹の中でただ一人美貌に見放されていたので、いきおい勉強や藝事には熱心で、ことあるごとに見せたくて仕方がなかった。

メアリーには才能もなければ趣味もなかった。虚栄心から熱心に努力はしていたが、その虚栄心ゆえに知ったかぶりや自惚れた態度も持合せていたので、仮に今よりも遥かに優れた腕前だったとしても、興醒めであったであろう。(p53)

美貌と愛嬌に恵まれなかったメアリ。

その代わりに知識や才能を見せびらすのですが、残念ながら才能もセンスもなく、わざとらしさが鼻につくというやや悲しい存在です。そのため、5人姉妹の中ではやや浮いた存在として描かれています。

二人の姉と一人の妹が嫁ぎ、かつ、もう一人の妹キティがエリザベス達のところへ行っている間、メアリは家で一人になります。

今までベネット夫人の相手は他の4姉妹に任せていれば良かったのですが、4人がいなくなれば、ベネット夫人の眼におのずとメアリがクローズアップされました。メアリは心ならずもベネット夫人の外出に付き合わされる羽目に。

その日の訪問に出掛けたり客を迎えたりするたびに、ちゃんとそれを種に相変わらず得意げに訓戒を垂れることを忘れなかった。メアリーはもはや姉達と器量を比較されて口惜しい思いをしなくてもよくなったので、それでこの変化をさほど嫌がらずに受容れているのではないか、というのが父親の見るところであった。(p656)

また、わたしも個人的にはベネット夫人と気質の異なる三女ということで確固たる愛情を受けた記憶がないであろうメアリはこの一人娘状態を気に入っていたのではないか、と思っています。

また、メアリは不器量とされていますが、それはこの辺りの一の美女ジェインやエリザベスと較べてみた場合の話。

メアリ一人なら並の美人であったのではないかしらん?と想像しています。

そして、いずれはメアリもどこかの男性に嫁ぎ、家政を握ったのではないでしょうか?メアリは決して愚かではなく、ただ虚栄心が強いだけだと思っていますので、がっちりと家計の紐を締める姿が想像できます。

個人的にわたしはベネット家の5人姉妹の内、メアリ・ベネットに一番似ているような気がします(笑)

メアリ・ベネットを演じた女優

『高慢と偏見』(1940年) マーシャ・ハント( Marcia Virginia Hunt )
『高慢と偏見』(1995年) ルーシー・ブライアーズ( Lucy Briers )
『プライドと偏見』(2005年) タルラ・ライリー( Talulah Riley )
『高慢と偏見とゾンビ』(2016年) ミリー・ブレイディ( Millie Brady )

1940年の作品でメアリを演じたマーシャ・ハントは今なお健在(2019年6月2日現在)。御年101歳。

その事実にただただ驚き、驚嘆しています。現在、わたしは40代半ばなので、あと60年近く生きるのか…と考えただけでクラクラします。

『高慢と偏見』は女性の生き方を考えさせられる作品ですが、マーシャ・ハントの人生に己が人生を改めて考えさせられました。

もう一人、『プライドと偏見』でメアリを演じていたタルラ・ライリーはテスラのCEO、イーロン・マスクの不倫、結婚、離婚、再婚が話題に。生真面目なメアリがそんなことに・・・!と驚いたものです。

経歴を見ていると物理学や数学に強そうなので、そのあたりがイーロン・マスクと気があったのかもしれませんね。

ともあれ、5人姉妹の真ん中、三女ということ、美貌に恵まれなかったこと、才気煥発な性格ではなかったゆえに「何者にもなれなかった」メアリは目立たない存在。

が、それゆえに『高慢と偏見』でのメアリに共感する人は多いのではないでしょうか。

少なくともわたしはメアリにシミジミと感じ入るものがありました。