ジェイン・オースティン( Jane Austen )、1775年イングランド南部ハンプシャーの牧師の家に生まれる。19世紀初頭に活躍した英国の女流作家。
近親者に囲まれ、生涯独身のまま、穏やかな生活のなかで捜索活動を続けた。代表作に『分別と多感』『高慢と偏見(自負と偏見)』『エマ』など。鋭い人間観察眼による心理描写を得意とする。1817年没。
ここではより詳細にジェイン・オースティンの家族と生涯、そして、彼女が残した作品を見ていきます。
ジェイン・オースティンの家族
父 ジョージ | オックスフォード大学のセント・ジョンズ・コレッジに入学し、文学士、文学修士、そして神学士の学位を取得 ケント州で牧師となり、その後、ハンプシャーのスティーブントンで牧師になった |
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母 カサンドラ | 牧師トマス・リーの娘 ロンドン市長やオックスフォードの学寮長を輩出した名家の出 |
長男 ジェイムズ | 学生時代から詩作や雑誌の刊行を手掛ける 父の後をついでスティーブントンの教区牧師 |
次男 ジョージ | 障害があり、他家に預けられた ※当時の習慣 |
三男 エドワード | ナイト家に養子、若い頃は家族と離れて暮らしたが、後年は一緒に過ごすことが多くなる ケント州やハンプシャー州に広大な敷地を持つ大地主 |
四男 ヘンリー | 義勇軍 → 銀行の共同経営 → チョートンの教区牧師 ジェインと一番仲が良く、彼女の出版を手伝った |
長女 カサンドラ | 生涯独身で過ごし、ジェインと仲が良かった |
五男 フランシス | 海軍元帥、ナイト、オースティン家の誇り 1865年、93歳で亡くなった |
次女 ジェイン | 本人 |
六男 チャールズ | 海軍軍人 |
ジェイン・オースティンの生涯
スティーヴントン時代 ジェイン、25歳まで
ジェイン・オースティンは1775年の冬、牧師の娘とし生まれました。
オックスフォード、サウサンプトン、レディングの寄宿学校で姉カサンドラとともに学んだ短い時期を除き、その他に特別な教育を受けることはありませんでした。
しかし、ジェインの父や兄たちも読書好きという文学的に恵まれた環境の中で、ジェイン500冊を超える蔵書や近所の街の貸本屋などを利用して読書にはげみました。
また、読むだけではなく、12歳の頃から、ジェインは小説を創作し、家族を楽しませています。
年頃になったジェイン・オースティンも母方の親戚の屋敷や近くの街で開かれる様々な舞踏会に参加し、大いに楽しんだ様子。だが、こうした生活は25歳のときに終わりを告げます。
牧師であった父が長男に食を譲って隠居を決め、妻と二人の娘をつれてバースへ転居することを唐突に決めます。突然、その話を聞かされたジェインは衝撃のあまり、気を失ったとも言われています。
バース時代 ジェイン、33歳まで
当時のバースは保養地として名高く、健康回復と社交を楽しみに多くの上流階級の人が集まってきた、と言われています。ジェインとカサンドラと二人の未婚の娘を持つ両親は娘たちの結婚相手を探す目的もあったのでしょう。
しかし、ジェインはバースの華やかな雰囲気に馴染めず、事実、この頃にはほとんど作品を書いていません。
そして、1805年に父親が亡くなると、生活は不安定になります。随分といろいろなところへの転居を繰り返しました。
チョートン時代 ジェイン、人生の幕をおろす
1809年に兄エドワードの斡旋により、ハンプシャー州チョートン村のコテージ(現在のオースティン博物館)に母、カサンドラ、親友のマーサ・ロイドと共に引っ越します。チョートンはかって住み慣れたスティーヴントン村に近かったこともあり、三人ともおお喜びだったそう。
このチョートンで過ごした期間、ジェインは多くの作品を完成させ、生み出すことになりました。『マンスフィールド・パーク』『分別と多感』『エマ』、そして『高慢と偏見』。
1816年ころからジェインは体の不調を感じはじめ、1817年の春、病気治癒のためにウィンチェスターへ移ります。
カサンドラの賢明な看病にも関わらず、7月18日、ジェインは41年の生涯を閉じました。
病名はアディソン病だったと伝えられています。ウィンチェスター大聖堂に祀られましたが、石碑にはどこもジェインが作家であったことは伝えられていません。
ジェイン・オースティンの略年譜
1775 | 12月16日、ハンプシャー州スティーヴントン村に8人きょうだいの7番目として生まれる |
1783(ジェイン7歳) | 姉カサンドラとオックスフォードにあったミセス・カウリーの寄宿学校へ入学 チフスに感染して、年内に帰宅 |
1785(ジェイン9歳) | カサンドラと共にレディングにあったアビースクールへ |
1786(ジェイン10歳) | 年末に姉と共にアビースクールをやめる ※ジェイン・オースティンが学校で勉強したのはこれが最後 |
1787(ジェイン11歳) | ジェイン、絵入りの物語をかきはじめる |
1788(ジェイン12歳) | 夏、ケント州の伯父の家に家族で滞在 またいとこの女性によるとジェインは「気紛れでなまいき」「全然かわいくない」 |
1789(ジェイン13歳) | 兄ジェイムズが週刊の文芸誌『ロイタラー』を刊行、一定の評価を得る |
1792(ジェイン16歳) | カサンドラが聖職者のトム・ファウルと婚約 ※但し、結婚には至らないまま、1797年にファウルは死去 |
1794年(ジェイン18歳) | 従姉のイライザの夫、フランス人貴族ジャン・フランソワ・カポー・ド・フュイドがギロチンで処刑 その後、イライザはイギリスに戻り、1797年にヘンリーと結婚 |
1795年(ジェイン19歳) | おそらくこの年、『分別と多感』の原型となる小説『エリナーとマリアン』を執筆 アイルランド出身のトム・ルフロイと恋愛 |
1796年(ジェイン20歳) | ルフロイとのロマンスが終わる 10月、『高慢と偏見』の原型『第一印象』を執筆開始 |
1797年(ジェイン21歳) | 小説『第一印象』が完成 11月、父がロンドンの出版社に手紙を送るが、出版を断られる 同月、『エリナーとマリアン』の改稿に着手 母がジェインの将来を心配する |
1798年(ジェイン22歳) | 8月、『ノーサンガー・アビー』の原型となる『スーザン』の執筆開始 11月、牧師職に内定していたサミュエル・ブラッコールから求愛されるが、立ち消えに |
1799年(ジェイン23歳) | 7月ごろ、『スーザン』が完成 8月、母方の親族が万引きで投獄、翌年の裁判で無罪 |
1800年(ジェイン24歳) | 12月、父が教区牧師を引退、一家でイングランド南西部の歩調地バースに引越しを決意 |
1801年(ジェイン25歳) | 5月、一家はバースへ引越し カサンドラによると、ジェインはとある青年とロマンスを |
1802年(ジェイン26歳) | カサンドラと共にケント州のエドワードの屋敷に滞在後、スティーヴントンを訪れる スティーヴントンにおける隣人だったビッグ家の息子ハリス(ジェインより5歳年下)よりプロポーズ いったん承諾したものの、翌朝に断りをいれる |
1803年(ジェイン27歳) | 『スーザン』が10ポンドでロンドンの出版業者リチャード・クロスビーに売れる |
1804年(ジェイン28歳) | おそらく、この年に『ワトソン家の人々』を執筆 |
1805年(ジェイン29歳) | 父死去 |
1809年(ジェイン33歳) | 兄エドワードの斡旋により、ハンプシャー州チョートン村のコテージ(現在のオースティン博物館)に母、カサンドラ、親友のマーサ・ロイドと共に引っ越す 生活が落ち着き、以降、旺盛な執筆を行う |
1810年(ジェイン34歳) | 冬、『分別と多感』がロンドンの出版業者『トマス・エジャートン』に受け入れられる |
1811年(ジェイン35歳) | 2月、『マンスフィールト・パーク』執筆開始 10月末、『分別と多感』が匿名で自費出版 ※当時は女性が匿名で出版することは珍しくなかった |
1812年(ジェイン36歳) | 8月、『高慢と偏見』の権利をトマス・エジャートンに100ポンドで売る |
1813年(ジェイン37歳) | 1月28日、『高慢と偏見』が匿名で刊行 初版1500部は好評のち完売、再版される |
1814年(ジェイン38歳) | 1月21日、『エマ』執筆開始 5月9日、『マンスフィールド・パーク』が刊行 |
1815年(ジェイン39歳) | 3月29日、『エマ』完成 8月8日、『説得』執筆開始 11月、ジェインの小説の愛読者であった摂政皇太子(のちのジョージ4世)の図書館長に招かれて、皇太子の宮殿カールトン・ハウスを訪れる |
1816年(ジェイン40歳) | 春、体調を崩し始める |
1817年(ジェイン41歳) | 3月18日、執筆をやめる 4月22日、遺言書を書く 7月18日、死去 |
兄ヘンリーによって、『ノーサンガー・アビー』と『説得』が刊行 |
映像化作品 アン・ハサウェイがジェイン・オースティンを演じる
2007年、ジェイン・オースティンの人生の一部分を切り取り、映像化されました。ジェームズ・マカヴォイ演じるトム・ルフロイとのロマンスが中心に描かれています。
ジェインをハリウッドの人気女優、アン・ハサウェイが演じています。
正直、ジェイン・オースティンを演じるならば、イギリス人女優の方が良かった方に思いますが、どうなんでしょうか。
映画『ジェイン・オースティン 秘められた恋( Becoming Jane Austen )』2007年/アイルランド・イギリス トム・ルフロイとの夕立のような恋
また、ジェイン・オースティンの作品は多く映像化されていますので、こちらの映画作品ページ や TV作品ページ で確認ください。
ジェイン・オースティンの残した作品
ジェイン・オースティンは41年の生涯において『高慢と偏見』も含めて6つの長編を残しました。
ジェイン・オースティンの生涯を描いた書籍紹介
上記は非常に平易な文体で書かれており、読んでいて楽しくなる本でした。